media arts lab + SCU

制作主体

合唱演奏者の個別の非言語的歌唱表現に見る集団で歌う行為の面白さ 演奏者自身が自身の歌唱表現を手書きで可視化できる手法の提案

 合唱の演奏者たちは演奏中、一緒に歌っている演奏者たちの声や息を吸う音、演奏空間に反響する音といった周囲の音をよく聴いている。演奏者個別の歌唱表現に聴衆が気づかないほど歌声が溶けて混ざりきったような美しい演奏をしたいため、彼らの歌唱表現におけるすべての判断は、互いの音をよく聴き合うことで相互依存的にされている。時折、演奏中に自分の声が周囲の声と馴染みきってしまって聴こえなくなり、周囲の音だけが聴こえている時があるほど、とにかく聴くことに集中し、聴こえている音に自身の声を適合させていく。

 他にはない合唱の特徴は、生まれ持った身体の違いによって声が千種万様で、誰かと全く同じ声を出すことは不可能であるにも関わらず、演奏者一人一人の歌唱表現に聴衆が気づかないほど統率のとれた演奏ができることである。しかし演奏者同士であっても個人単位の歌唱表現について話し合ったりすることはあまりない。

 本研究では、歌声が溶けて混ざりきったような美しい合唱演奏の中で、聴衆には気づかれないレベルで、演奏者一人一人が自身の身体や考えに基づく多様な歌唱表現をしていることを「隠れた歌唱表現」と定義し、これに注目する。これこそが合唱の面白さの源泉の一つであると考えるからだ。

 演奏者たち一人一人のどのような歌唱表現が集団の演奏を作り上げているのかを可視化して掘り下げることで、これまで日の目を浴びてこなかった合唱の独自の面白さを明らかにして、表現することを目指す。そのためには演奏者自身の内省が重要であるため、外部からの観察的な記録によってではなく、演奏者自身が内省を通じて自身の歌唱表現を手書きで記録する「内省歌唱記譜法」を提案した。

展示風景の記録